英 文 名 | : | Nursing Ethics |
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科 目 概 要 | : | 修士 看護学研究コース前期、選択必修科目、講義、2単位 修士 高度実践看護学コース前期、選択必修科目、講義、2単位 |
担 当 者 | : | (◎は科目責任者) ◎長尾 式子※、 大石 敏広(兼担)、 齋藤 有紀子※(兼担)、 高原 勝(非常勤) |
講 義 室 | : | 遠隔授業(ライブ型)、対面授業、N号館 セミナー室3、N号館 セミナー室4 |
そ の 他 | : | 関連科目 |
現代の医療ケアでは多様な価値観や、医療福祉政策と医療専門職の裁量の狭間で医療福祉専門職は、難しい価値判断が求められる。難しい価値判断を支援するAdvanced levelの看護スペシャリスト、看護実践の基盤となるエビデンスを構築する看護研究者になるために必要な倫理概念、倫理的検討の手法を習得するために、以下について学ぶ。
1.バイオエシックスの定義と歴史的な変遷を土台として、医療倫理および看護倫理の歴史的発展を理解する。
2.看護職者を対象としたさまざまな倫理綱領の基本的内容を理解する。
3.看護実践の場で発生する倫理的課題に対応するために、基盤となる諸理論・諸概念を理解する。
4.看護領域で起こる可能性が高い倫理的課題を孕む具体的な事例に対する倫理調整の方法を理解する。
5.看護の各専門分野で起こる可能性が高い倫理的課題に対する看護師が行う倫理調整の方法を理解する。
6.看護師の倫理的課題に対して、組織的な取り組みの必要性と方法を理解する。
1.医療倫理・看護倫理の基礎:定義、原則、歴史的背景について解説する。
2.倫理学の基礎:倫理原則、倫理理論を解説する。
3.倫理学の応用:倫理原則、倫理理論を用いて医療現場のジレンマを解決する手法を解説し、演習する。
4.医療倫理の重要概念:患者の権利とインフォームド・コンセントの概念を解説し、演習する。
5.終末期医療ケアをめぐる倫理:脳死、遷延性昏睡、腫瘍患者や非がん患者の終末期医療ケアについて解説し、問題へのアプローチ法を演習する。
6.生命のはじまりをめぐる倫理:出生前診断、出生前治療、生殖補助技術について解説する。
7.医療の公正さ:医療資源の配分、更生医療について解説する。
8.事例検討の手法:4分割表、臨床倫理のチェックリストなどを解説し、演習する。
1. 講義および講義テーマに関するディスカッション
2. 個々の専門領域や研究領域における看護倫理のテーマに関するプレゼンテーションとディスカッション
3. 事例検討
4.課題レポート
事例検討や、ディスカッションの際に、解説や補足、助言などを通してフィードバックを行う。
最終課題のレポートに対してはコメントを加筆し、各院生に返却し、フィードバックを行う。
回 | 項目 | 内容 | 担当者 | 日時 | 講義室 |
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1 | 看護倫理学の基礎・概論 | ・医療倫理、看護倫理の定義・原則と歴史的な発展 □保健医療ケアにおける:患者の権利、インフォームド・コンセント、倫理医療資源の配分 ・専門職と倫理 □看護職の倫理綱領 □看護職の医療ケアにおける倫理的配慮:アドボカシー、ケアリング □医療専門職と倫理綱領:協力・協働、職種の価値判断 ・保健医療ケアにおける倫理的葛藤・ジレンマが生じる場面を振り返り、看護職が遭遇する倫理的問題を理解する。 | 長尾 式子 | 4/9(水)⑤ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
2 | 研究倫理 | ・研究不正の事例を通して研究者倫理について議論する。 ・研究における倫理的問題の動向について議論し、自らの研究の倫理的側面について考える。 | 長尾 式子 | 4/9(水)⑥ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
3 | 倫理学・応用倫理学の基礎 | ・倫理学的概念(考え方)を理解する。 ・倫理学理論の基礎を理解する。 ・応用倫理学(医療倫理、生命倫理)の基礎を理解する。 | 大石 敏広 | 4/16(水)⑤ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
4 | 臨床医療における倫理:インフォームド・コンセント | ・インフォームド・コンセント(概念)の歴史的、社会的背景を理解し、医療現場における患者の権利、尊厳をめぐる道徳的ジレンマの存在を理解し、その解決法を考える。 ・意思決定における医学的リスク・ベネフィットと、それに伴う療養上のリスクについて考え、看護がインフォームド・コンセントをどのように支援するのか考える。 | 長尾 式子 | 4/16(水)⑥ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
5 | 生命の始まりをめぐる倫理的問題 | ・出生前診断・生殖補助医療技術をめぐる倫理問題を理解し、医療ケアのあり方を考える。 | 齋藤 有紀子 | 4/23(水)⑤ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
6 | 終末期医療ケア、死をめぐる倫理的課題 | ・終末期の医療ケアの倫理的問題:治療の差し控え・中止(作為・不作為)、代理決定、二重結果など重要概念を理解する。 ・死の定義の変遷:死の定義をめぐる倫理的ジレンマを理解し、医療現場において解決に向けた倫理的配慮や論点で検討する。 ・死者の尊厳:遺体や死後のケアにおける倫理的配慮、尊厳について検討する。 | 長尾 式子 | 4/23(水)⑥ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
7 | 終末期をめぐる倫理的問題:がん患者の終末期医療 | ・がん患者の終末期の特徴を理解する。 ・がん患者の終末期医療の意思決定と医療ケアの実際から倫理的問題を理解する。 | 長尾 式子 | 5/7(水)⑤ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
8 | 終末期をめぐる倫理的問題:非がん患者の終末期医療 | ・非がん患者の終末期の特徴を理解する。 ・非がん患者の終末期医療の意思決定と医療ケアの実際から倫理的問題を理解する。 | 長尾 式子 | 5/7(水)⑥ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
9 | 医療の公正 | ・健康格差と医療保健の倫理的問題 ・矯正医療の倫理(権利、人権、医療の公正) | 高原 勝 | 5/14(水)⑤ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
10 | 公衆衛生の倫理 | ・公衆衛生倫理 ・集団の利益と個の利益 ・医療資源の配分 | 長尾 式子 | 5/14(水)⑥ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
11 | 倫理学・応用倫理学の基礎 事例研究① | ・事例①に即して、医療現場における道徳的ジレンマの存在を理解し、その解決法を考える。 ・問題解決における倫理学の関わりについて考える。 | 大石 敏広 | 5/21(水)④ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
12 | 倫理学・応用倫理学の基礎 事例研究② | ・事例②に即して、医療現場における道徳的ジレンマの存在を理解し、その解決法を考える。 ・問題解決の方法論について考える。 | 大石 敏広 | 5/21(水)⑤ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
13 | 医療・看護組織における倫理 | ・看護サービスの組織が有する倫理的課題 ・医療保健施設の倫理的問題について議論と考察 | 長尾 式子 | 5/28(水)⑤ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
14 | 倫理的課題解決のための倫理的意思決定理論[1] | ・倫理的課題解決のための倫理的意思決定理論[1] □事例検討 | 長尾 式子 | 5/28(水)⑥ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
15 | 倫理的課題解決のための倫理的意思決定理論[2] | ・倫理的課題解決のための倫理的意思決定理論[2] □事例検討 | 長尾 式子 | 6/4(水)⑤ | N号館 セミナー室3・N号館 セミナー室4 |
1.看護倫理のルーツとなっているバイオエシックスの定義を説明することができる。
2.医療倫理および看護倫理の定義・原則および歴史的変遷を理解し、今日の倫理的問題を説明することができる。
3.看護師の倫理綱領を理解することで、看護師としての看護実践の判断基準を理解し、自らの実践を判断基準を用いて説明することができる。
4.基盤となっている倫理に関連する諸理論・諸概念を理解し、看護実践の場で発生する倫理的課題を分析し、倫理的論点を整理することができる。
5.看護領域で起こる可能性が高い倫理的な課題を孕む具体的な事例への倫理調整の方法を議論し、考察することができる。
6.看護の各専門分野で起こる可能性が高い倫理的課題を共有し、倫理的論点で議論することができる。
7.組織において看護師が直面する倫理的問題、倫理的ジレンマ、倫理的ディストレスを理解し、組織内で専門・認定看護師として必要となる対策・取り組みを議論することができる。
以下の内容で評価する。
1.授業への積極的な参加(30%):ディスカッションや質疑に積極的、自発的に参加している。
2.課題発表(20%):倫理的問題の明確化、倫理原則の援用、倫理綱領による自らの実践の省察を明確に説明している。
3.最終課題レポート(50%):倫理的問題を明確にし、倫理的分析に基づく問題解決に向けた計画を立案している。
1 | 予習:30-60分 ・講義で取り扱う内容について、自身の経験、事例を準備して参加する。 ・講義で取り扱う内容に関するニュース、記事、論文を読んで参加する。 ・講義で習得した知識や概念を用いてプレゼンテーション資料を作成する。 復習:30-60分 ・講義終了後は実施した内容を復習し、次の授業へ生かす。 ・講義内容を基に自身の実践を振り返る。 |
2 | 〔学位授与の方針と当該授業科目の関連〕 《修士課程(看護学研究コース)》 ◎(1)看護学研究者として専門分野および周辺領域の知識・技術を持ち、実現可能で専門分野あるいは社会において意義のある研究課題を設定する能力 ◎(2) 研究課題に適した研究デザインと研究方法を選択し、計画的かつ倫理的に実施する能力 ◎(3) 研究結果を考察し、論文を執筆する能力 ◎(4) 専門分野における研究の成果を看護実践の質向上に活用する能力 ◎(5) 看護学を教育するための基本的能力と技能 《修士課程(高度実践看護学コース 専門看護師プログラム)》 ◎(1) 専門分野における卓越した看護実践能力 ◎(2) 専門職者としての倫理的課題の解決能力、多職種と連携するための調整能力、コンサルテーション能力 ◎(3) 専門分野の看護実践の中で、研究的手法を用いて課題解決する能力 ◎(4) 専門分野における看護実践の質を向上させるための教育的役割を果たす能力 ◎は特に関連するもの、○は関連するもの |
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | 1.『看護実践の倫理(第3版)』 | Fry,A.T. & Johnstone,M.(2005)/片田範子・山本あい子(2010). | 日本看護協会出版会. |
教科書 | 2.『入門・医療倫理Ⅰ改訂版』 | 赤林朗 編(2017). | 勁草書房. |
教科書 | 3.『臨床倫理学』 | Albert R. Jonsen, Mark Siegler, William J. Winslade(2002)/赤林明、蔵田伸雄、児玉聡 監訳(2006) | 株式会社新興医学出版社 |
参考書 | 1.系統看護学講座 別巻『看護倫理』第2版 | 宮坂道夫 他 著(2018) | 医学書院 |
参考書 | 2.『ケーススタディ いのちと向き合う看護と倫理 | Elsie L. Bandman, Bertram Bandman(2002)/木村利人 監訳(2010) | 人間と歴史社 |
参考書 | 3.臨床倫理学入門 | 福井次矢、浅井篤、大西基喜(2003) | 医学書院 |
参考書 | 4.倫理コンサルテーションハンドブック | 堂囿俊彦 編著(2019) | 医歯薬出版株式会社 |
参考書 | 5.倫理コンサルテーションケースブック | 堂囿俊彦、竹下啓 編著(2020) | 医歯薬出版株式会社 |
参考書 | 6.『看護倫理1・2・3』 | Dooley,D. & McCarthy,J.(2005)/坂川雅子(2006). | みすず書房. |